デイリーコメント ーベッセント米財務長官がFRBに大幅利下げ要求で米ドル続落

投稿日: 2025年8月14日18時47分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• FRB利下げ観測の高まりを受け、米ドルが続落
• ベッセント米財務長官が次回会合での0.50%利下げを要求
• 日銀のインフレ指標への懸念から円は上昇
• S&P500、ナスダック、ビットコインが史上最高値を更新

ベッセント米財務長官、FRB に0.50%の利下げを要求

米ドルは昨日、全ての主要通貨に対して続落しました。これは、7月の米CPI指標が、関税が消費者物価に与える影響はこれまでのところ限定的であったことを示唆し、FRBの利下げ観測が高まったことによるものです。

昨日、ベッセント米財務長官は、「一連の利下げ」は正当化されると述べ、FRBは9月会合での0.50%利下げを皮切りに、緩和サイクルを再開すべきだと述べました。この発言は、FRBが金融政策を運営する上で直面している政治的圧力をさらに強めるものであり、市場関係者は米政権の思うままとなるかどうか、固唾を飲んで見守っています。

ベッセント氏の発言に加えて、レビット米大統領報道官は、FRB本部改修工事の管理を巡り、トランプ大統領がパウエルFRB議長を提訴することを検討していると述べました。

米PPI発表を前に、FRBの利下げ観測は高まる

これらの状況を踏まえ、投資家たちは現在、9月会合での0.25%利下げを完全に織り込んでいます。実際、0.50%の「ダブル利下げ」が行われる可能性も7%とわずかにあると予想しています。年内に実施が予想される合計利下げ幅は、0.60%から0.64%へと拡大しています。

アトランタ連銀のボスティック総裁は昨日、米労働市場がなお完全雇用に近い状態にあることから、FRBは忍耐強く対応でき、利下げを急ぐ必要はないと述べました。一方、シカゴ連銀のグールズビー総裁は、FRBは関税が米国のインフレを一時的に押し上げるのか、それともより持続的に影響を与えるのかを見極めようとしていると発言しました。両総裁の見解は、FRB内で広く共有されている「利下げを急ぐ必要はない」という見方と一致していますが、市場は前例になく、FRB外の政府関係者らの発言により一層注目しています。

とはいえ、本日、米ドルトレーダーは7月の米生産者物価指数(PPI)に一段と注目する可能性が高いです。生産者物価が鈍化となる場合、これが今後数ヶ月間の消費者物価のさらなる低下が続くことを示唆する可能性があります。よって年内に3度目となる0.25%の利下げ観測が一段と現実味を帯び、米ドルにとっては更なる下押し要因となるでしょう。

日銀の対応は後手に回っているのか

ベッセント財務長官は、FRBの対応のみでなく、日銀についても発言しました。同氏は、日銀が利上げを先送りしたことに対し、「後手に回っている」と述べました。さらに、一部の日銀関係者が曖昧に定義されたインフレ指標の是正を求めているとの報道も重なり、ベッセント氏の発言は円にとっては追い風となりました。

植田日銀総裁は、基調的なインフレ率が日銀の目標である2%を下回っていることため、利上げには慎重な姿勢をとってきました。しかし、「基調的なインフレ」を測る明確な指標は存在していません。実際には日本の総合CPIもコアCPIも数年にわたって2%を上回っています。このため、日銀は不明確な指標に過度に依存して政策運営をしているとの批判の声が強まっています。日本のオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場によれば、年末までに0.25%の利上げが実施される確率は再び65%に上昇しています。

米株式とビットコインが続伸

米株式では、S&P500とナスダックが2日連続で史上最高値を更新しました。FRBがこれまでの予想よりも早く、そしてより大幅な利下げを行う必要に迫られているかもしれないとの期待が好材料となったようです。本日の米先物は下落していますが、本日、軟調な米生産者物価(PPI)指数が確認されれば、これが投資家のリスク好選度を高め、米株価は再び未知の領域となる史上最高値に向かって上昇を促す可能性があります。

米ドル安の流れの中で、ビットコインも史上最高値を更新しました。世界最大の暗号資産であるビットコインは、米国の重要な規制変更を受け、機関投資家の関心が高まったことから恩恵を享受し、既に上昇基調となっていました。直近の動きとしては、トランプ大統領が暗号資産を企業型確定拠出年金に組み入れることを認める大統領令に署名したことが挙げられます。