デイリーコメントー本日のFRB議長の講演を前にタカ派メンバーの発言で利下げ観測後退

投稿日: 2025年8月22日19時34分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・FRBメンバーが金融政策の転換に消極的で9月での利下げ観測後退
・パウエル議長は強く利下げを示唆しないとの予想高まり、米ドル安定
・ハイテク株が引き続き低迷で米株価続落
・ウクライナの和平交渉は問題山積みで原油価格は週次上昇へ

本日のFRB議長の講演を前に利下げ観測後退

ジャクソンホール会議でのFRBパウエル議長の講演は本日14:00(GMT)に予定されていいますが、他のFRBメンバーによる非常に慎重な見解を受けて、9月での利下げの期待は既に後退しています。FRBのメンバーらは昨日、7月の低調な雇用統計以来、金融政策のスタンスはそれほど変化がないことを示唆し、早急な利下げの必要性が疑問視されています。

ワイオミング州で毎年行われるジャクソンホール会議の主催者であるカンザスシティ連銀シュミッド総裁は、インフレ加速のリスクの方が、労働市場の低迷のリスクよりも「やや高い」との水曜日に発表された前回のFOMC会合議事要旨のメッセージを強調しました。クリーブランド連銀ハマック総裁は、今年はFOMC会合で投票権を持ちませんが、もしFOMC会合が明日開催されるとしたら、利下げには投票しないと言及しました。また、アトランタ連銀ボスティック総裁も投票権はないものの、今年はあと1回の利下げとなるとの見通しを維持しました。

シカゴ連銀グルースビー総裁は、9月のFOMC会合はライブとなることを示唆し、ややハト派的見解を示しました。

8月の米PMI指数が予想を上回り、FRBへのハト派転換期待が後退

市場は9月のFOMC会合での利下げ観測について急速に後退させており、0.25%の利下げ確率は、FRBメンバーの発言以前の84%から約70%まで低下しています。しかし、この利下げ観測後退の背景には、FRBメンバーの発言だけでなく、一連のPMI(購買担当者景気)指数の上昇もありました。

S&Pグローバルによる8月のPMI指数の速報値は昨日、製造業とサービス業ともに予想を大幅に上回り、先月上旬の堅調な伸びが示唆されたことで、トランプ大統領による関税政策の混乱による状況悪化への懸念が緩和しています。

さらに、サブインデックスである8月の雇用指数と物価指数も上昇したため、労働市場が深刻な問題に陥っているとの証拠なしに、インフレ加速のリスクを軽視するのは時期尚早であるとのFRBの大方の見解を裏付けています。それにもかかわらず、7月16日の週の失業保険申請件数が小幅上昇したため、FRBは今後の雇用統計も特別に注意を払うことになるでしょう。

来月のFOMC会合前に発表される次の雇用統計が本日のジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演よりも重要となる可能性があります。市場は本日の講演にて、FRBが大きくハト派に転換することを期待していませんが、パウエル議長が来月の利下げを示唆して市場を驚かす可能性もあります。

本日の米ドルは主要通貨に対して上昇しており、今週約1%の上昇に向かっています。

AI関連株下落の中、米株価苦戦

米株価は最近あまり良いパフォーマンスではありません。昨日のS&P500は5日連続で下落して引け、ナスダック100指数は今週初めて何とか黒字となりましたが、今週2.4%下落しています。

ジャクソンホール会議にてどれほどハト派に傾くかへの期待が低下した事とは別に、AI関連株が低迷しています。

今週初め、米企業によるAI支出についての懸念を再燃させる報道があり、ハイテク株は今月上昇分の半分以上ほど下落しました。CHIPS法の下、政府の助成金を受けている企業の株式を保有するとの米政府の計画とともに、エヌビディアの半導体H20が中国からの要請により生産停止を余儀なくされているとの報道が、AIを巡っての悲観的なセンチメントに拍車をかけています。

エヌビディア株は今週3%下落しています。

反対に、中国株は上昇しており、ロンドンの株式市場であるFTSE100指数も上昇しています。

ユーロと円は報道からの恩恵ならず、原油価格は週次上昇へ

良いニュースとしては、米国とEUの間で関税合意の枠組みの最終調整に入り、欧州の自動車産業にとって朗報となっています。米国はEU市場に一部の米国製品が優先にアクセスすることを条件に、自動車や鉄鋼などの業種別関税からEUを対象外とすることに合意しました。

しかし、この貿易協定合意もユーロにとっては大きな影響とはならず、ユーロは本日米ドルに対して若干下落しています。また、日本の7月の消費者物価(CPI)指数が本日、予想をやや上回りましたが、日本円にはあまり反映されていません。

コモディティ市場では、ブレント原油先物が特に2.5%も上昇しており、原油価格が今週は上昇しています。ロシアが和平への一歩として、ウクライナの安全保障の合意への交渉に建設的に関与するとの期待が後退しているため、米国がロシアの石油輸出に新たに制約を設けるのではとの懸念が高まっています。