デイリーコメント – 軟調な米 PPIとAI株楽観視で米株高、米ドルは堅調、本日は米CPI発表を控える

投稿日: 2025年9月11日20時02分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• 米PPIが予想外に軟化、本日の米CPI鈍化への期待が高まる
• FRB利下げ観測の高まりが米株式を押し上げるも、米ドルは小幅上昇
• オラクルの決算を受けたAI株楽観視が、米株価の更なる後押しに
• ECB会合を前にユーロは低調に推移

本日、米CPI発表を控え市場は明るいムード

リスク資産は本日も上昇を続けました。これは、FRBが来週新たな利下げサイクルを開始するとの見方が強まったことや、AI関連分野の見通しに対する楽観ムードが再燃したことを受けています。米株価は昨日、史上最高値を更新し、本日は中国および日本の株価指数も急騰しました。

株式市場は、昨日の米生産者物価指数(PPI)の予想外の下振れによる安心感と、AI需要拡大を背景にしたソフトウェア大手のオラクルの好調な業績見通しの両方から恩恵を享受しているようです。

8月の米PPIは予想を下回る上昇にとどまり、前月から大きく鈍化したことで、関税によるインフレ懸念が和らぎました。総合PPIおよびコアPPIのいずれも3.0%を下回ったため、本日発表の米消費者物価指数(CPI)での予想外の急上昇リスクが後退しました。

総合CPIは前年比2.9%上昇と予想されており、一方でコアCPIは3.1%の上昇が予想されています。もし本日のCPIデータも予想を下回るようであれば、来週のFOMC会合での0.50%利下げ観測が大きく高まる可能性があります。しかし、市場はすでにかなりハト派的なポジションを取っているため、仮にCPIが予想以上に加速した場合には、大幅な調整が起こるリスクもあります。

投資家は、米労働市場の最新状況を把握するため、本日の週間新規失業保険申請件数にも注目するでしょう。これは、CPIの結果が大方予想通りだった場合、週間新規失業保険申請件数の結果が、より相場を動かす要因となる可能性があるためです。

オラクルの決算がAI株の急騰に拍車をかける

その一方で、世界の株式市場には明るいムードが広がっています。水曜日にはS&P500とナスダックがそろって史上最高値で取引を終え、本日は日本の日経平均株価も同様に史上最高値を更新しました。

しかし、昨日発表されたオラクルの決算を受けて、再びハイテク株への資金シフトが起きているため小型株やより伝統的な銘柄株は後手に回っているようです。

オラクルの第1四半期の業績は予想をわずかに下回ったものの、投資家は大幅な受注増に注目し、これが今後の四半期の利益拡大につながるとみているようです。

具体的には、AIを活用したクラウドコンピューティング需要の急増を背景に、受注の指標である残存履行義務が、359%増の4,550億ドルに跳ね上がりました。広範な株式市場の上昇余地は現時点では多少限定的であることは指摘すべき点ですが、AIに対する懸念は後回しとなりました。

米ドルは利下げ観測に反発し小幅上昇、円は苦戦

一方、為替市場は比較的落ち着いた動きとなっており、米ドルはFRBの利下げ観測の高まりに逆らい、小幅に上昇しています。対主要通貨で米ドルは、米雇用統計(NFP)を受けた月曜日の下落分を完全に帳消しにしており、大局的には横ばいの状態が続いています。これは、FRBがどれほど積極的に利下げを実施するのか、市場がいくらか不透明感を示しているのかもしれません。

昨日の米PPIの発表後、FF金利先物はほとんど変動しませんでしたが、本日の米CPIの結果に対しても同様の反応となる公算があるでしょう。来週水曜日のFOMC会合で0.25%利下げが既に織り込まれている中、投資家たちは大きなポジションを取る前に、FRBの最新のドットプロットを見極めようとしているようです。

米ドルは、日本国内の政治的不安に揺れる円に対しても堅調に推移しています。日銀が年内後半に再び利上げを行う可能性を示す証拠は揃っています。しかし、投資家は石破首相の後任が誰になるのか、特に新首相が日銀の長年にわたる金融政策の正常化計画を支持するかどうかを見極めるまで慎重な姿勢を崩していないようです。

ユーロはフランスの政治混乱の中、ECBの政策金利決定に注目

ユーロとポンドは最近は政治的リスクによる影響を受けており、フランスとイギリスの両方で債務危機のリスクが高まっています。フランスのマクロン大統領がセバスチャン・ルコルニュ氏を新たな首相に任命したことにより、現時点では債務危機深刻化への懸念は和らいでいます。ただし、すべてはルコルニュ新首相が野党の支持を得て、2026年予算案を通過させられるかどうかにかかっています。

ただし、直近の焦点は本日のECB会合です。ECBは大方金利を据え置くと見られていますが、ラガルドECB総裁が今後の追加利下げを示唆するような発言をすれば、ユーロは圧力を受ける可能性があるでしょう。

ゴールドと原油が下落

コモディティ市場では、ゴールドが本日やや弱含みで推移しており、これは今月連続で史上最高値を更新してきた急騰が一服しているためです。最近の米ドルの底堅さを踏まえると、米ドルが新たな暴落を受ける可能性は低いと考えられ、ゴールドは短期的に再び上昇トレンドに戻るのが難しいかもしれません。

本日、原油先物も下落して取引されており、米国や同盟国によるロシア産原油輸出への追加制裁の懸念の高まりや、中東情勢の緊張再燃にもかかわらずです。原油供給不足への懸念は、特に昨日の米国週間石油在庫統計の急増を受け、年内に供給過剰が生じるリスクによって相殺されています。