デイリーコメント – ゴールドはガザ合意を受け最高値から下落、米ドルはFOMC議事要旨公表後堅調

投稿日: 2025年10月9日19時15分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• トランプ大統領がガザ和平計画合意を発表、ゴールドは下落も原油は変化なし
• 円安進行で1ドル153円に割り込む、為替介入への警戒感が強まる
• AIが引き続き株式市場を牽引、米株価は再び史上最高値を更新

ガザ和平計画の第1段階への合意で、ゴールドの急騰が一服

トランプ大統領は昨日、イスラエルとハマスが、ガザで2年間続いた戦争を終結させ、待望の停戦をもたらすことを目的とした、和平計画の第1段階に合意したと発表しました。この合意により、ハマスが2年前の10月7日の攻撃以降拘束しているイスラエルの人質全員が、早ければ月曜日にもパレスチナ人囚人と引き換えに解放される可能性があります。

この合意は全20項目からなる提案のうちの第1段階に過ぎませんが、トランプ大統領が今週末に中東地域を訪問する予定であることから、イスラエルとハマスの双方が本気で交渉に取り組んでいることがうかがえます。これを受けて、ゴールドは本日やや下落しており、これまでの上昇が一服しています。

ゴールドは昨日、4セッション連続で史上最高値を更新し、初めて1オンスあたり4,000ドルの大台を上回って取引を終えました。ただし本日は下落に転じており、原稿執筆時点では何とか4,000ドル台を維持している状況です。地政学的リスクの緩和に加え、米ドル高もゴールドの強気相場の勢いを鈍らせており、近い将来、さらなる調整局面が入る可能性も出てきています。

円安が進む中、米ドル高継続

今週、米連邦政府がつなぎ予算をめぐる対立の影響で依然として閉鎖されたままであるにもかかわらず、米ドルは堅調に反発しています。米ドルは主に円安の影響を受け、主要通貨に対し約2か月ぶりの高値で推移しています。

円は月曜日以降、財政・金融政策にハト派である高市氏が与党・自民党の総裁に選出されたことを受け、売り圧力にさらされています。高市氏は、10月20日に国会で正式に承認される見通しで、日本で初の女性首相となる可能性が高くなっています。当初、首相指名選挙は10月15日に予定されていましたが、自民党と少数与党の連立パートナーである公明党との協議に予想以上に時間がかかっているようです。

投資家はサプライズはないと予想していますが、今後誕生する新政権が日銀の利上げによる金融正常化計画の障害になるという見方から、円を売り込んでいます。とはいえ、もし高市氏が大幅な財政刺激策を進めるのであれば、日銀がそこまで長く利上げを見送るのは難しいと考えられるため、円安予想は行き過ぎているのかもしれません。

それでも、米ドルが153円を上回ったことで、市場ではやや慎重な姿勢が見られ始めています。というのも、ドル円相場が155円台に近づけば近づくほど、財務省による為替介入のリスクが高まるためです。

ユーロとポンドは米政府閉鎖による米ドル弱気相場を活かせず

本日、米ドルをさらに下支えしているのは、昨日公表された9月のFOMC議事要旨を受けて、市場がFRBの利下げ観測をわずかに後退させたことです。議事要旨には目立ったサプライズはなく、今後の利下げ経路をめぐる意見の分裂が拡大していることが確認されました。それでも、大多数の当局者は年内の追加利下げを支持しており、これは市場全体の前向きなセンチメントを支える材料となっています。

本日後半の注目は、12時30分(GMT)に予定されているパウエルFRB議長の発言に集まりますが、金融政策については言及しないかもしれません。

それまでは、9日目に突入した米政府機関の閉鎖を解除すべく、共和党と民主党が資金法案における意見の相違について合意となるような進展はないようです。最大の争点は、医療保険補助の延長をするかどうかです。水面下では何らかの協議が行われている可能性もありますが、公式な発表もなく、米経済指標も発表されない状況の中、市場ではあまり混乱は見られていません。

米ドルは、ユーロやポンドに対しても巻き返しつつあります。フランスでは恐らく金曜日に新首相が任命される見通しですが、マクロン大統領が再び解散総選挙の実施を回避しているため、これがフランスの政治的な行き詰まりを解消するかどうかは不透明です。

これによりユーロは1.1610ドル前後で取引をしやや安定していますが、ポンドは本日、最も下落しており、1.3350ドルに向け3日連続で下落しています。

AI過熱懸念もある中、AI熱狂が米株価の新史上最高値をもたらす

米株式市場では、S&P500が火曜日の下落分を帳消しにし、再び史上最高値を更新して6,753.72ポイントで取引を終えました。ダウ平均は横ばいで取引を終えましたが、ナスダック100は1.2%上昇し、新たな最高値を記録しました。

米政府閉鎖やFRBの利下げ観測を巡る不透明感があるにも関わらず、最近のAI関連取引への関心がテクノロジー株やAI関連株を押し上げています。主な動きとしては、OpenAIとの提携を発表したAMDが昨日さらに11%急騰したこと、米商務省が対アラブ首長国連邦へのエヌビディア半導体輸出を承認したことを受け、同社の株価が上昇したこと、そしてDellも長期業績見通しを上方修正したことから上昇しました。

しかし、AI関連株のバリュエーションの過熱に対する懸念が高まる中、本日、米先物はわずかに下落して取引されています。イングランド銀行がAIバブルへの警戒感を表明した翌日には、JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)も「急激な調整」の可能性について言及しました。