デイリーコメントー米経済見通しへの懸念から株価下落、ドル安

投稿日: 2025年11月14日19時46分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・ナスダック100と一般消費財関連株の下落で米株価下落
・暗号資産にも圧力でビットコインは重要な10万ドル台を下回る
・FRBタカ派の講演と12月の利下げ観測後退からリスク資産下落か
・ドル/円安定、英政情不安からポンド下落

リスク資産は下落基調

待望の米政府機関の閉鎖終了と米中間の貿易停戦にもかかわらず、昨日はリスク資産にとって非常に低調な日となりました。株式と暗号資産が最も下落し、ゴールドは当初の下落から回復して、4,160ドルから反発しています。

主要米株価指数も昨日下落し、ナスダック100が最も下落しました。ナスダック100は、3.5%の下落となった10月10日以来最悪の日中下落幅となりました。10月10日の下落の次の日はわずか2.2%しか回復できませんでした。S&P500の下落となったのは、昨日のハイテク株の売りに先立って、一般消費財関連株の売りが下落の要因となりました。米消費者心理が低下する中、株価下落は軟調な米経済の見通しを強く示唆するものと解釈される可能性があります。

同様に、暗号資産も深刻な圧力を受け続けており、イーサは昨日約7%下落しました。本日のイーサは回復を試みていますが、ビットコインが10万ドルの重要な水準から大幅に下回って下落しており、暗号資産の見通しは依然として非常に弱気のままです。ビットコインが10万ドルを下回って取引を終えたのは6月以来となります。

実際、暗号通貨資産にとっては3週連続の下落となり、この傾向は8月下旬以来となりますが、現在の下落ペースは8月よりもかなり早いペースとなっています。特に下落基調が4週継続することは稀で、最後に4週連続で下落したのは2024年7月となります。

このリスクオフ反応にもかかわらず、ゴールドも昨日圧力を受けて下落し、上昇基調が一段落しました。本日のゴールドは回復を試みていますが、株価の反応とユーロに対する米ドル安を考慮すると、ゴールドがもっと上昇すると予想できたはずです。そうは言っても、為替市場での動きが限定的となっており、NZドルなどリスクオン通貨は米ドルに対して上昇しています。

リスク資産の調整を引き起こした要因は何か

昨日の下落の要因はいくつか挙げられますが、どれも正確には当てはまりません。12月のFRBによる利下げについて意見が分かれる中、クリーブランド連銀ハマック総裁とミネアポリス連銀カシュカリ総裁の意見が現在の株価調整を正当化すると指摘するアナリストもいます。しかし、両氏ともにタカ派であり、特にハマック総裁はタカ派を代表する存在であり、彼らの意見が投資家の意表を突くものだったとは考えにくいです。

特に顕著なのは、ハト派が依然として静観していることで、前回10月下旬のFOMC会合にて金利据え置きに投票したカンザスシティ連銀シュミッド総裁とともに、ダラス連銀ローガン総裁、そしてアトランタ連銀ボスティック総裁が本日後半に講演を行う予定で、さらにハト派的見解が示される場合、リスク選好度がさらに低下する可能性は十分あります。

米政府機関の閉鎖による経済への深刻なダメージが示唆される経済データの発表が遅れていることへの懸念も依然として残っていますが、この影響は既に織り込み済みのはずです。第4四半期の経済データが基調的な経済を反映するものではなく、正確なデータの入手が可能になるまで、FRBによる利下げを阻止する可能性があることを投資家は承知しています。

一方、米中間での貿易停戦やAIを巡る競争が激化しているにもかかわらず、ハイテク株は11月上旬以来の圧力に晒されています。中国への高度なAI半導体輸出を規制する目的である「GAIN AI法案」が現在米上院で協議されており、アマゾンとマイクロソフトの支持を得て、大手ハイテク株の間で亀裂が生じている一方で、中国との新たな貿易摩擦となる可能性も高まっています。

特に、中国は国内の半導体生産を増大させており、 エヌビディアによる中国への半導体輸出に規制がかかる中、ファーウェイとアリババ両社が恩恵を受けようと試みており、米国を本拠地とする半導体企業にとっては新たな悩みのタネとなっています。市場にとっては、来週のエヌビディアによる決算報告が次の試金石となるでしょう。

円安は一段落、ポンドの下落続く

ドル安を主な要因として、ドル/円の上昇が一段落する一方で、ポンドは引き続き圧力に晒されています。労働党の左派がスターマー首相を追い出して、より左派寄りの首相を担ぎ上げようと検討しているとの報道を受けて、スターマー首相は11月26日の秋季予算案にて、取得税の増税を見送る決定をしたようです。

英政府は300億ドルもの財政赤字に対応するために、秋季予算案では固定資産税などの他の税収が織り込まれることになり、労働党左派からの反論を鎮める可能性があります。この方針の方向転換は投資家からは好意的に受け止められず、ユーロ/ポンドは2023年4月以来の高値である0.8864まで上昇しています。また、イングランド銀行による12月の利下げ確率もさらに押し上げられています。