デイリーコメントーFRBの楽観的な経済予測で株価反発、米ドル下落の中、貴金属が上昇

投稿日: 2025年12月12日20時15分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・AIを巡る懸念の中、米国と世界の株式市場は最高値更新
・FRBのタカ派ドットプロットも米ドルは3週連続で下落の見込み
・日銀の利上げ観測高まるも円は上昇できず、低調な英経済データでポンド下落
・銅とゴールド・シルバーが上昇、ベネズエラと米国関係悪化で原油価格上昇

FOMC会合決定後に米株価反発

FRBが今週のFOMC会合決定にて、来年の利下げは金利を据え置きた後、たった1回となると見積もった中、昨日の米株式市場は、AI株の高バリュエーションへの懸念を先送りして、全体的に上昇しました。市場は、労働市場の軟化でFRBが利下げをせざるを得なくなると考えているため、依然として来年は2回の0.25%の利下げを完全に織り込んでいます。

昨日、先週の米新規失業保険申請件数が4年半ぶりの大幅な増加となり、労働市場軟化との見解を後押しする形となりました。ただし、週間失業保険申請件数は23.6万件と過去12カ月の平均をわずかに上回る水準でした。投資家はまた、FRBによる2028年までのGDP成長率予測が楽観的だったことにも安堵感を覚えました。

しかし、市場がどの経済データを判断材料とするのかを選択しており、軟調な労働市場と堅調な経済成長は通常では同時に起こらないという事実を無視しているとも言えます。さらに、トランプ大統領が任命するFRBパウエル議長の後任によって、来年5月以降のFRBの方針がよりハト派となり、400億ドル規模の短期国債買い入れ計画開始によって、金融システムの流動性が高くなることへの期待もあります。

AIを巡る懸念でAI関連株はFOMC会合決定からの恩恵なし

S&P500 は昨日0.2%上昇して新最高値に近づきましたが、日中最高値は達成できませんでした。NYダウは1.3%、ラッセル2000は1.2%の上昇となりましたが、ナスダックは0.35%下落しました。

アジア株も上昇し、欧州株価指数も本日は上昇していますが、米株式先物とナスダック先物は続落を示しています。

ハイテク銘柄の多いナスダックの下落は、オラクルが決算報告でクラウド事業の成長鈍化を発表し、懸念が引き起こされたことで、オラクル株が10.8%下落したことが主な原因です。ブロードコムも昨日四半期決算報告を発表しました。米半導体メーカーであるブロードコムの決算は非常に好調な結果にもかかわらず、利益率低下が株価のセンチメントを悪化させ、市場開場前の取引で4%以上も下落しました。

マイクロソフトとメタは黒字で取引を終えるなど、損失の一部を補うことができたものの、巨大ハイテク大手のマグニフィセント7も苦戦しました。

米ドルは安値から反発、英中銀は来週利下げ決定か

為替市場では、水曜日のFOMC会合決定を受けて、米国債利回りが回復する中、米ドルは昨日新たな圧力を受けましたが、本日は若干反発しています。そうは言っても、米ドルは今週3週連続の下落となる見通しで、主要通貨に対して約2か月ぶりの安値付近で取引されています。

本日、イギリスの月次生産データを受けて、10月の英経済成長率(GDP)が2カ月連続で0.1%縮小したため、ポンドは下落しました。

英経済は夏以来ほとんど成長しておらず、秋季予算案前の増税への懸念が10月の消費者の重荷となりました。来週の英雇用統計と消費者物価(CPI)指数の発表は、18日に予定されているイングランド銀行の金利政策決定にとってさらに重要となりますが、本日のGDP成長率低下によって、来週の0.25%の利下げ観測がさらに押し上げられ、現在90%弱となっています。

来週の日銀による利上げへの懐疑心から円は再び下落

反対に、日銀は来週の政策会合にて、今年1月以来初めて利上げとなると予想されています。日銀の情報筋によると、日銀は中立金利の見通しを参考にしないことが示唆されており、利上げに関してもっと柔軟な姿勢を取る可能性があります。

日銀情報筋からのかなりのヒントが示されているものの、全ての投資家が日銀が来週利上げを行うことを確信してはおらず、円は引き続き155円台で取引されています。

ゴールド、シルバー、銅も今週は好調

しかし、オーストラリア準備銀行とニュージーランド準備銀行、そしてカナダ銀行が次の会合で利上げとなる可能性が高まっている中、資源国通貨にとっては好調な週となり、特に貴金属の価格上昇も資源国通貨上昇をサポートしています。

ゴールドは過去数日で勢いを取り戻し、本日4,300ドルの最高値を更新し、シルバーも最高値となる64.35ドルを更新しました。中国政府が来年の財政支援策を約束したことが銅先物の後押しとなり、今週は好調な週となりました。

米国とベネズエラの関係悪化で原油価格に控えめなサポート

しかし、原油価格にとっては今週は複雑な週となり、トランプ大統領が違法麻薬密輸者と戦うために、ベネズエラ本土に軍事攻撃を命じたとの憶測も広がっています。米国はベネズエラ産の石油輸送を停止させる目的であり、水曜日には制裁対象の石油タンカーを拿捕しています。

トランプ大統領による攻撃の背景には、ベネズエラの政権交代がある可能性が高いものの、米国がベネズエラの石油などの資源をコントロールしたいのではと考える向きもあります。

現在のところ、市場ではパニックとはなっておらず、供給過剰への懸念が話題を独占しているため、原油先物は短命ながらも一時的に上昇しました。